上肢の障害とスポーツ傷害
整形外科は、近年、細分化が著しく、専門性の高い診療が求められています。
「肩・肘・手外科センター」では、この中でも、肩から指先まで(上肢)を専門に診察治療にあたります。
繊細な動きをつかさどる上肢は、機能が非常に重要となり、回復には総合的な診断と治療、リハビリテーションが必要となります。センターを設立することで、地域住民の皆さんに、受診しやすく、より専門性の高い医療を提供していきたいと考えています。今回は上肢に多い障害やスポーツ傷害についてお話しします。
「肩・肘・手外科センター」では、この中でも、肩から指先まで(上肢)を専門に診察治療にあたります。
繊細な動きをつかさどる上肢は、機能が非常に重要となり、回復には総合的な診断と治療、リハビリテーションが必要となります。センターを設立することで、地域住民の皆さんに、受診しやすく、より専門性の高い医療を提供していきたいと考えています。今回は上肢に多い障害やスポーツ傷害についてお話しします。
解説医師紹介
肩・肘・手外科センター センター長
整形外科 科長
澤田 智一
日本整形外科学会整形外科専門医、日本手外科学会手外科専門医・指導医
01. 肩・肘の痛みと障害
肩こりって何?
首すじ、首のつけ根から、肩または背中にかけて、張った、凝った、痛いなどの感じがし、ひどくなると頭痛や吐き気を伴うこともあります。肩こりは予防が大切です。
- 同じ姿勢を長く続けない。
- 蒸しタオルなどで肩を温めて筋肉の血行を良くする。
- 適度な運動や体操をする。
- 入浴し身体を温め、リラックスする。
五十肩(肩関節周囲炎)って何?
中年以降、特に50 歳代に多くみられます。 肩や腕が痛んで腕が上がらない、 衣服の脱ぎ着ができないなどの症状があります。
主な原因は、関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して、肩関節の周囲の組織に炎症が起きることです。
自然に軽快することも多く、急性期(痛みが強い時期)は安静、痛み止めの内服、注射を、急性期以降は温熱療法、運動療法などのリハビリを行います。 時期によって治療法が変わります。
主な原因は、関節を構成する骨、軟骨、靱帯や腱などが老化して、肩関節の周囲の組織に炎症が起きることです。
自然に軽快することも多く、急性期(痛みが強い時期)は安静、痛み止めの内服、注射を、急性期以降は温熱療法、運動療法などのリハビリを行います。 時期によって治療法が変わります。
腱板断裂って何?
加齢や肩の酷使などで、肩甲骨と上腕骨をつないでいる腱が切れてしまうと、肩の運動障害・運動痛・夜間痛が出ます。 五十肩と違うところは、関節の動きが固くなること(拘縮)が少ないことです。 発症のピークは60歳代ですが、 断裂があるから、 必ず症状があるとは限りません。
保存療法(注射や運動療法)で断裂部が治癒することはありませんが、症状は70%程度の方が改善します。 手術は断裂した腱板を骨に縫着するもので、関節鏡(内視鏡)視下手術・通常手術(直視下手術)があります。 手術後は一定期間の固定と十分な機能訓練が必要となります。
保存療法(注射や運動療法)で断裂部が治癒することはありませんが、症状は70%程度の方が改善します。 手術は断裂した腱板を骨に縫着するもので、関節鏡(内視鏡)視下手術・通常手術(直視下手術)があります。 手術後は一定期間の固定と十分な機能訓練が必要となります。
変形性肘関節症・肘部管症候群って何?
肘関節の酷使(スポーツ、重労働)、骨折などの肘関節外傷、関節炎などが原因で肘関節に変形が出現します(変形性肘関節症)。
肘の内側で神経(尺骨神経)が慢性的に圧迫や牽引されることで発症する神経の障害が肘部管症候群です。 しびれ・感覚障害や巧緻障害(細かいことがやりづらくなること)が出てきます。
麻痺が進行しているときは手術で神経を圧迫している靱帯の切離や骨を削ったり、 神経を前方に移動することもあります。
肘の内側で神経(尺骨神経)が慢性的に圧迫や牽引されることで発症する神経の障害が肘部管症候群です。 しびれ・感覚障害や巧緻障害(細かいことがやりづらくなること)が出てきます。
麻痺が進行しているときは手術で神経を圧迫している靱帯の切離や骨を削ったり、 神経を前方に移動することもあります。
02. 手首・手の痛みと障害
手首・手・指に多い障害は?
● 狭窄性腱鞘炎(ばね指)
「指の曲げ伸ばしがひっかかる」
「指の曲げ伸ばしがひっかかる」
- 治療は、安静にする、注射、手術など
- 妊娠後期や更年期の女性に多い
- 親指、中指、薬指に多くみられる
● 手根管症候群
「明け方に強い手のしびれ」
「明け方に強い手のしびれ」
- 治療は、固定、注射、手術など
- 圧倒的に女性に多く生じます
● へバーデン結節
「指の第一関節が腫れて痛む」
「指の第一関節が腫れて痛む」
- 治療は、固定、注射、手術など
- 40歳代以降の女性に多く発生
● 母指CM関節症
「蓋を開けようとすると親指の付け根が痛い」
「蓋を開けようとすると親指の付け根が痛い」
- 治療は装具固定、手術など
● 橈骨遠位端骨折
「転倒して手をついたら手が曲がっちゃった」
「転倒して手をついたら手が曲がっちゃった」
- 治療はギプス固定、または手術を行います
- 中年以後の女性にもっとも多い骨折の形
手首・手・指に多い腫瘍は?
● ガングリオン
「手首にしこりができた。押すと少し痛い」
「手首にしこりができた。押すと少し痛い」
- 手~手首にできる腫瘍性病変で最も多い病変です。
- しかし、真の腫瘍ではなく、悪性腫瘍(がん)になることもありません。
● 軟部腫瘍
腱滑膜巨細胞腫、血管腫、グロムス腫瘍、神経鞘腫、類上皮嚢腫、脂肪腫ほか、種類はたくさんありますが、悪性腫瘍は1%以下です。
● 骨腫瘍
内軟骨腫、骨軟骨腫等がありますが、やはり悪性腫瘍は1%以下です。
腱滑膜巨細胞腫、血管腫、グロムス腫瘍、神経鞘腫、類上皮嚢腫、脂肪腫ほか、種類はたくさんありますが、悪性腫瘍は1%以下です。
● 骨腫瘍
内軟骨腫、骨軟骨腫等がありますが、やはり悪性腫瘍は1%以下です。
03. 上肢のスポーツ障害
肩関節に多いスポーツ障害は?
肩関節脱臼
外傷による肩関節の脱臼は、ラグビー、アメフトなどのコンタクトスポーツに多いです。
肩関節は一度脱臼を起こすと、その後は脱臼しやすくなり、脱臼の回数を増すごとに軽微な外力で起こるようになります。
スポーツ活動ばかりでなく、寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなり、そのような状態を「反復性肩関節脱臼」といいます。その場合は手術加療が必要です。
外傷による肩関節の脱臼は、ラグビー、アメフトなどのコンタクトスポーツに多いです。
肩関節は一度脱臼を起こすと、その後は脱臼しやすくなり、脱臼の回数を増すごとに軽微な外力で起こるようになります。
スポーツ活動ばかりでなく、寝返りのような日常動作でも脱臼が起こりやすくなり、そのような状態を「反復性肩関節脱臼」といいます。その場合は手術加療が必要です。
肘関節に多いスポーツ障害は?
上腕骨外側上顆炎(いわゆるテニス肘)
30~50歳によく起こります。
テニス愛好家に生じやすいので、テニス肘と呼ばれています。
手首を伸ばす働きをしている短橈側手根伸筋が障害されて起こります。
ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが生じます。
ストレッチや安静、湿布や注射、バンドを装着し治療する保存療法をまずは行います。
30~50歳によく起こります。
テニス愛好家に生じやすいので、テニス肘と呼ばれています。
手首を伸ばす働きをしている短橈側手根伸筋が障害されて起こります。
ものをつかんで持ち上げる動作やタオルをしぼる動作をすると、肘の外側から前腕にかけて痛みが生じます。
ストレッチや安静、湿布や注射、バンドを装着し治療する保存療法をまずは行います。
野球肘
成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害を野球肘といいます。
肘の外側で骨同士がぶつかって、骨・軟骨が剥がれたり痛んだりします。肘の内側では靱帯・腱・軟骨が痛みます。症状としては、投球時や投球後に肘が痛くなります。
投球の中止が重要で、肘の安静が大切です。痛みを我慢して投球を続けていると障害が悪化して、症状によっては手術が必要になることもあります。
また、メジャーリーガーの大谷選手は、投球による障害である肘内側側副靭帯損傷に対してTommy John法で手術を行っています。当院でも行っている手術法です。
成長期にボールを投げすぎることによって生じる肘の障害を野球肘といいます。
肘の外側で骨同士がぶつかって、骨・軟骨が剥がれたり痛んだりします。肘の内側では靱帯・腱・軟骨が痛みます。症状としては、投球時や投球後に肘が痛くなります。
投球の中止が重要で、肘の安静が大切です。痛みを我慢して投球を続けていると障害が悪化して、症状によっては手術が必要になることもあります。
また、メジャーリーガーの大谷選手は、投球による障害である肘内側側副靭帯損傷に対してTommy John法で手術を行っています。当院でも行っている手術法です。
手指に多いスポーツ障害は?
槌指(つちゆび)
スポーツ中に突き指をして指先が伸びないとの訴えで受診することが多いです。
第1関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自分で伸ばそうと思っても伸びません。
しかし、他動伸展は可能で、手伝って伸ばすと伸びます。
指を伸ばす伸筋腱の断裂または骨折が原因であり、装具による治療、または鋼線固定による手術を行います。
スポーツ中に突き指をして指先が伸びないとの訴えで受診することが多いです。
第1関節が曲がったままで痛みや腫れがあり、自分で伸ばそうと思っても伸びません。
しかし、他動伸展は可能で、手伝って伸ばすと伸びます。
指を伸ばす伸筋腱の断裂または骨折が原因であり、装具による治療、または鋼線固定による手術を行います。
【運動編】凝った筋肉をほぐすには?
“肩もみ”、“肩たたき” など、筋肉に物理的な刺激を入れたり、お風呂やシャワーで温めることで、表層にある僧帽筋の血行の一時的な改善が可能です。しかし、菱形筋や肩甲挙筋は身体の深い部分にあるため、直接刺激を入れたり、十分に温めることが難しい筋肉です。そのような筋肉は、肩甲骨を意識して動かすことで血行を改善し、ほぐすことができます。座ってできる簡単な運動を3つご紹介します。
POINT
運動を行う上で、注意しましょう
- 無理はせず、痛みのない範囲で行う
- 肩甲骨の動きを意識する
- 動かしている筋肉を意識する
- 反動をつけず、ゆっくり行う
- 呼吸をとめずに行う
肩甲骨や筋肉の動きを意識しながら
① 肩甲骨を上げる・下げる
(僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋)
(僧帽筋・肩甲挙筋・菱形筋)
② 肩甲骨同士を近づける・遠ざける
(僧帽筋・菱形筋)
(僧帽筋・菱形筋)
③ 肩甲骨を外側・内側に回す
(僧帽筋・菱形筋)
(僧帽筋・菱形筋)
お悩みの方は、ご相談ください。
〈広報誌「体温計」第157号より〉