グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



ホーム > メディカルコラム > 心臓病と脳卒中の深い関係

心臓病と脳卒中の深い関係


「脳卒中」は、ひとたび発症すれば命に関わるだけでなく、後遺症を残し、寝たきりや認知症の原因になることもあります。
その脳卒中の原因に心臓が大きく関わっていることをご存知でしょうか?
この「心臓と脳の深い関係」について、循環器内科、心臓血管外科、脳神経外科の専門医に聞きました。

解説医師紹介

循環器内科 科長
川人 充知

日本循環器学会循環器専門医、日本内科学会総合内科専門医、日本内科学会指導医、日本心血管インターベンション治療学会専門医、日本不整脈心電学会不整脈専門医

心臓血管外科 医長
川口 信司

日本心臓血管外科学会心臓血管外科専門医、日本外科学会外科専門医、胸部ステントグラフト実施医・指導医、腹部ステントグラフト実施医・指導医

脳神経外科 科長
石黒 光紀

脳神経外科学会専門医、脳血管内治療専門医、脳卒中学会専門医・指導医



「心臓と脳の深い関係」について

どうして心臓病と脳卒中が関係するのでしょうか?

川人:不整脈の1つ「心房細動」(しんぼうさいどう)という病気は、心臓の中に血の塊ができ、それが飛び出して脳に詰まると突然脳梗塞を発症することがあります(心原性脳塞栓症/しんげんせいのうそくせんしょう)。脳梗塞は治療が遅れると、場合により寝たきり状態となり、人生が大きく変わってしまいます。また、脳出血は突然脳血管が破れて脳内に出血する病気です。これは、心臓病と同様に高血圧や飲酒・喫煙などの危険因子があります。脳卒中は、脳梗塞と脳出血、くも膜下出血の総称です。

「心房細動」が脳梗塞の原因になるのですね、どんな病気なのでしょうか?

川人:正常な心臓はペースメーカーの働きをする部位(洞結節/どうけっせつ)から電気信号が送られ、4つの部屋(左右の心房と心室)が一定のリズムで収縮し血液を送り出します〈下図1〉。心房細動を起こした心臓は心房が痙攣のようなピクピクした状態となり、不規則で速い脈になることが多く、それにより動悸やめまい、息切れなどを感じます。心房細動では左心房内の血流がよどみ、「左心耳」と言われる狭い空間に血栓ができることがあります〈下図2〉。その血栓が脳梗塞の原因となります〈下図3〉。

心房細動の治療は?

川人:最も大切な治療は抗凝固療法です。服薬により簡便に血栓を予防することができます。不整脈を一時的に鎮めるには抗不整脈薬が有効です。根治を目指すには、心筋焼灼術(しんきんしょうしゃくじゅつ/アブレーション)というカテーテル治療があります。特に若年者には非常に有効ですが、再発も少なくありません。場合により、薬の治療と併用する必要があります。抗凝固療法は、出血の副作用や腎機能の悪化などにより長期的に続けていくことが難しい患者さんもいらっしゃいます。最近では、血栓源となる左心耳を閉鎖するカテーテル治療もできるようになりました。

心房細動に対して外科的な治療はありますか?

川口:心房細動は、心臓弁膜症を合併することが多く、弁膜症に対する外科的手術のときに、同時に不整脈の原因となる部位への治療や、外から左心耳を閉鎖させる治療があります。特に内科的に治療が難しい、長年持続した心房細動や、心房が非常に大きくなって弁逆流を生じている患者さんには、外科手術が有効です。

脳卒中は怖い病気なんですね!

石黒:脳卒中は寝たきりの原因の第一位です。前兆なく、突然発症することが多いため、ひとたび発症すると突然重症になることがあります。そのため、予防がとても大事です。

どんな症状ですか?

石黒:一般的には、脳梗塞・脳出血の場合は、突然手足のしびれや力が入らない、ろれつが回らない、ひどいめまいで嘔吐する、時には視野が欠けることもあります。くも膜下出血の場合は突然激しい頭痛が起きて吐き気を伴い、意識がもうろうとしてきます。症状に異変を感じたときは、大急ぎで救急車を呼んでください。当院では、24時間体制で救急治療を行い、社会復帰を目指して早い段階からリハビリを行います。

脳卒中にならないようにするには?

川人:出血や動脈硬化の予防には、日々の生活習慣の管理がとても大切です。塩分や間食を控え、バランスのよい食事を心がけてください。心房細動は、人によっては自覚症状のない場合もあり、油断できません。また、心房細動は飲酒や睡眠時無呼吸症候群が誘因となることも多いため、飲酒量が多い人やいびきをかく人は、注意が必要です。定期健診を受けること、普段から自身の脈が規則正しく打っているか確認すること(検脈)を勧めます。


治療法01:心房細動を内科的に治療する【循環器内科】

1

薬物治療

  • 抗凝固治療
    血栓をできにくくするお薬です。
    脳梗塞を予防する非常に大事な治療となります。出血の副作用に注意が必要です。

  • 抗不整脈薬
    不整脈による動悸や頻脈を抑えるお薬です。初期には有効なことがありますが、根治は難しいです。脈が遅くなりすぎると難しくなります。

2

カテーテルアブレーション(心筋焼灼術)

心房細動という不整脈の起源となる心房の一部を高周波で焼灼したりバルーンで冷凍し、心房細動の根治を目指した治療です。ただし、長年持続した心房細動には効果が乏しくなるため、早めの手術を勧めています。

3

経カテーテル左心耳閉鎖術(ウォッチマン)

出血リスクなどで抗凝固薬の継続が難しい場合や、脳梗塞を繰り返す場合などに、最も血栓のできやすい左心耳をふたしてしまう治療です。数カ月後にふたの表面が覆われれば、抗凝固薬を中止することができます。

4

経皮的僧帽弁(けいひてきそうぼうべん)クリップ術(マイトラクリップ)

外科的な手術リスクの高い患者さんに対し、カテーテルを用いて僧帽弁の逆流をクリップで軽減する画期的な治療です。


治療法02:心房細動を外科的に治療する【心臓血管外科】

1

メイズ手術、外科的肺静脈隔離術

心房内の不整脈の原因となる回路を遮断する治療です。高周波電流や冷凍凝固により異常な電気の通り道を遮断します。弁膜症手術と同時に行うことが多いです。

2

弁置換術、弁形成術

心臓の弁の異常(弁膜症)に対する手術です。僧帽弁弁膜症は心房細動を合併しやすいと言われています。自身の弁を治す弁形成術と、人工弁に取り換える弁置換術があります。

3

外科的(胸腔鏡下)左心耳閉鎖術

血栓ができやすい左心耳を閉鎖する治療です。他の心臓手術と同時に行うことが多いです。また、カテーテルによる左心耳閉鎖術が難しい場合に、内視鏡(胸腔鏡)を用いて行うことがあります。


治療法03:脳梗塞急性期の脳外科治療【脳神経外科】

「おかしいな」と感じたら、 すぐに病院へ! 脳卒中のサイン “FAST” を見逃さないように!

脳梗塞を発症してしまった場合は、できるだけ早く治療を開始することが重要です

1

血栓溶解療法(t-PA)

発症から4.5時間以内の急性期脳梗塞に対する標準的な治療です。 t PAという注射薬を点滴し、脳動脈に詰まった血栓を溶かし、再度血液が流れるようにする治療です。

2

脳血管内治療(カテーテル血栓回収療法)

脳血管の血栓を、直接カテーテルで取り除く治療です。 主に太い脳血管に詰まった血栓に適応となります。 血栓溶解療法や血栓回収療法により、今までなら手足の麻痺が残っていたような症例も、超急性期に血流の再開が得られれば後遺症なく歩いて帰るというケースも増えてきています。そのためには発症から治療までの時間が鍵になります。

3

リハビリテーション

脳梗塞によって失われた身体機能を、理学療法や作業療法、言語療法を用いて回復させることを目的とします。日常生活に必要な運動、感覚、発語、認知機能などの障害に対してリハビリを行い、改善を目指します。また、脳梗塞の再発予防のための食事指導や社会復帰のサポートも行います。病状により、慢性期にリハビリ専門病院に転院して、長期的に継続することも効果的と考えます。

〈広報誌「体温計」第159号より〉

動画でご覧になりたい方へ

このテーマで【市民公開講座】第15回静岡市民「からだ」の学校を開催しました。
当日の様子を静岡病院公式YouTubeチャンネルにて配信しています。ぜひご覧ください。