グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ




そけいヘルニア



そけいヘルニアとはどんな病気?

そけいヘルニアは一般には脱腸とも言われ、太ももの付け根(そけい部)の筋膜から腸などの内臓が皮膚の下に飛び出た状態になります。普通は立った時やお腹に力を入れた時に膨らみができ、寝たり手で膨らみを押さえると元に戻ります。膨らみができることで違和感や痛みが生じることもあります。
【注:膨らみが急に硬くなったり、痛みが強くなったりして、元に戻らなくなることもあります。このような場合を嵌頓(かんとん)といって、緊急手術が必要な場合もありますので、すぐに病院を受診してください。】

幼児にできるそけいヘルニアはほとんどが先天的なものですが、成人にできるそけいヘルニアは加齢とともに筋肉が弱ってくるのが原因であることが多く、40代以降の男性に多い病気です。日本では年間12万人の患者様がいるといわれ、決して珍しい病気ではありません。当院では毎年180人近くの患者さんがそけいヘルニアの手術をうけています。

そけいヘルニアの種類

太ももの付け根あたりにできるヘルニアには、外そけいヘルニア、内そけいヘルニア、大腿ヘルニア、閉鎖孔ヘルニアがあります。

1:外そけいヘルニア(成人の場合)

そけい部にはそけい管というトンネル状のものがあり、男性であれば精索(精巣へ血液を送る血管や、精子を送る管が含まれます)がそけい管を通っています。周囲の筋肉が弱くなると、そけい管の入り口(内そけい輪といいます)が大きな穴のようにあいてしまい、お腹に力がかかる動作が繰り返されると、次第に腹膜がその穴から袋状に伸びてきます。袋状に伸びた腹膜をヘルニア嚢といいます。一旦ヘルニア嚢ができると、自然に治ることはありません。ヘルニア嚢の袋の中に腸などの内臓が入ると膨らみができ、お腹のなかに内臓が戻ると膨らみがなくなります。膨らみが大きくなると陰嚢にまで膨らみが及ぶことがあります。そけいヘルニアでは最も多いタイプで、40代以降の男性に多い病気ですが、女性にもそけい管はあり(子宮を支える靱帯の一種が通っています)、女性でもみられる病気です。

2:内そけいヘルニア

内そけい輪よりも内側(正中)寄りに筋肉の弱いところができると、ここから外そけいヘルニアと同じように腹膜が伸びてヘルニア嚢となり、ヘルニア嚢の中に内臓が入って膨らみができることがあります。外そけいヘルニアとは原因となる穴の位置が異なりますが、症状もよく似ており、高齢の男性が多いですが、女性でもみられます。

3:大腿ヘルニア

そけい部の近くにできますが、やや脚に近いところに膨らみができます。大腿輪という、脚に血液を送る血管や脚の神経が通るトンネルの入り口がひろがってしまい、ここから腹膜が伸びてヘルニア嚢ができます。中年以降の女性に多い病気です。腸が飛び出たまま戻らなくなる嵌頓という状態になる可能性が高いといわれています。比較的珍しいタイプです。

4:閉鎖孔ヘルニア

大腿ヘルニアよりさらに珍しいタイプのヘルニアで、骨盤にある閉鎖孔という穴(閉鎖神経という神経や、閉鎖動脈、閉鎖静脈という血管が通っています)が広くあいてしまい、ここからヘルニアができます。痩せ型の高齢女性に多く、ヘルニアが出来ていても膨らみとして気づきにくい場所のため、嵌頓して初めてみつかることもあります。

5:その他

幼児のそけいヘルニア
幼児にできるヘルニアは大部分が外そけいヘルニアですが、原因は成人の場合と異なり、胎児の時に精巣が陰嚢まで移動する過程で腹膜が一緒におりて袋状に残ることでできるとされています。手術方法も成人とは異なります。

そけいヘルニアの手術について

そけいヘルニアは前述のとおり、加齢とともに筋肉がよわってくることが原因であることが多く、手術でこの弱くなった筋肉を補強することで治療します。自然に治るということは基本的にありません(幼児の場合を除く)。
ここでは成人のそけいヘルニアを例にご紹介します。

1:従来法(バッシーニ法、マックベイ法、iliopubic tract repairなど)

そけい部の皮膚を切開して手術を行います。そけい部の筋肉を縫い縮めることで弱くなった筋肉の補強をします。現在の主流であるメッシュを使った方法より再発率は高くなり、また筋肉を縫い縮めたことによる術後の痛みやつっぱり感が生じることがあります。しかし、メッシュは汚染された場所には使えないため、例えば腸が嵌頓して壊死(血流がわるくなり腐ったような状態になることです)しているときなどはこの方法で手術を行っています。

2:メッシュを使った方法、その1(メッシュプラグ法、PHS法など)

そけい部の皮膚を切開して手術を行います。弱くなった筋肉にメッシュという人工の網(ポリプロピレン製)をあてて補強をします。メッシュの形状は様々なものが開発されており、ヘルニアのできている位置やその周囲の筋肉の弱くなっている範囲、程度により選択しています。
当院ではこの手術法で日帰り手術も行っています。(ただし、現在は日帰り手術を行っておりません)

3:メッシュを使った方法、その2(腹腔鏡下そけいヘルニア手術)

腹腔鏡という手術用のカメラを使って手術を行います。臍部などに3箇所小さな創をつけて、テレビモニターを見ながら手術を行います。筋肉の補強は人工の網(メッシュ)を用います。

腹腔鏡手術の利点としては
  • 左右同時に手術ができること
    従来の方法では両側にそけいヘルニアがある場合には右と左にそれぞれ約5cm程度の創をつけることになりますが、腹腔鏡手術ではごく小さな傷で同時に手術ができます。

  • 十分に観察ができること
    1ヶ所だけ膨らみを自覚されている場合でも、実は複数ヘルニアができていることがあります(左だけでなく右にもできている、外そけいヘルニアだけでなく大腿ヘルニアもできている、など)。腹腔鏡手術は、そけい部の皮膚を切開するやり方よりも広い範囲を観察することができるので、患者さんが自覚されていなかった小さなヘルニアもみつけて同時に治療することができます。

  • 補強がさらに丈夫にできること
    筋肉の層よりも内側(腹膜側)にメッシュを固定します。これは筋肉の外側にメッシュを固定するよりもさらに腹圧に対して丈夫な補強となるとされています。また、そけい部を切開する方法よりも広い範囲を覆うメッシュを使うことでより丈夫に補強ができます。


  • 腹腔鏡手術の欠点としては
    • 全身麻酔が必要なこと
    • そけい部を切開する方法と比較し、手術費用が高いこと

    などが挙げられます。
    また、当院では現在1泊入院でこの手術を行っています。


    患者さんのそけいヘルニアの状態や、全身の状態、また、患者さんのご希望などに応じて適切な手術方法を検討しますので、御相談ください。